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北海道教科研会報 １０９号 ２００７年５月１５日 北海道教育科学研究会（会長 内島貞雄北海道教育大学教授、事務局 池田考司） 連絡先 doukyoukaken@dj.pdx.ne.jp ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/doukyoukaken |
北海道教科研第９８回研究会のお知らせ
６月９日（土）13時から札幌市厚別区の厚別区民センター（ＪＲ新札幌駅、地下鉄東西線新札幌駅徒歩5分）で北海道教科研第９８回研究会を開催します。
今回は、4月に行われた全国学力テストに関わって、テストの実施状況、テストの持つ学力観の分析と真に求められる学力像について、学力テストに関わった小中学校教師、学力論に詳しい研究者をシンポジストとして、北海道民間教育研究団体連絡協議会（道民教）との共催で行います。会報の発行が遅れたのもその調整のためでした。
13時から、庄井良信北海道教育大学大学院准教授の講演が行われ、その後、道民教プレ合同研究集会の分散会の一つという位置づけでシンポジウムを行います。マスコミは、学力テスト実施後は、ニュース価値がないと考えているのか、学力テストについて全く報道をしていませんが、１９６０年代の時のように誤ったテストを続けさせないための検証と運動が重要です。
実態の把握と学力論の検討という２つを行う重要な研究会になると思いますので、関心を持たれた方はぜひご参加ください。
内容 全国学力テストの実施状況と学力論を検討する
日時 ６月９日（土）１３～１７時
場所 札幌市厚別区民センター
道教科研第９７回研究会報告
２月２４日の北海道教科研第９７回研究会は大学院生を含む多数の参加者がある中、具体的で深い検討を行うことのできる会となりました。参加した方々に依頼し、書いていただいた感想を紹介します。
①今回の例会にたいする私的コメント
富田充保（札幌学院大学・教科研常任委員）
今回池田・Aさん（稚内の教師）の稚内事件の報告を聞いて、一番心に引っかかったのは殺害依頼を受けて実行したB君の生育環境と人格形成の質をめぐってであった。
池田先生の報告からは、B君の同級生の親であり、彼を幼い頃から知り、様々な行事でのつながりも持ち、事件後も彼に接見してぜひあなたのことを大切に感じているよと伝えたい、そのような一母親の手記を知ることができた。そこからは彼に関心を寄せる身近な大人が存在していたことが窺い知れる。全国の孤立した核家族と子どもたちの生育環境を考えたときに、稚内にはなお少なくない身近で関心を寄せ合う環境が大切に育てられていることに思い至る。
にもかかわらず、なぜB君はそうした他者を内面に棲まわせ、対話しながら自己を作り出して自らの意識と行動の主人公になっていかなかったのか。なぜなら殺害依頼をしたA君の母親も転校してからのこととはいえ、そうした自分を知り関心を寄せてくれる母親の一人であっただろうからである。
それを考えるヒントの1つに、AさんがB君の小学校時代の他者との関係が「ちぐはぐ」な感じだったと述べたことに注意を引き寄せられた。さらにもしかしたら何か問題を引き起こすのではないかなという不安もどこか感じていたと付け加えていた。つまり、どんなに他者との関係が量として存在していたとしても、それがどこかで、その他者の呼びかけを自分なりに受け止め咀嚼し、相手に投げ返すという有機的な応答関係に満ちていないならば、それではどこまでも他者を自らの内面に棲ませることはできないのではないか。なぜなら、「ちぐはぐ」だというのは、事実としてのコミュニケーションが、他者からの呼びかけをいったん自分の感情・意識・見解等と付き合わせ、自らの考えを揺さぶり膨らませて行く、という契機になっていなかったということの表れのように思えたからである。
もしそうであるならば、このことは他者との関係性をどう育てるかという課題と同じくらいに、また他者の考えを論理的に受け止め、自分の考えを整理して相手に伝えるという根本的かつ基本的な能力・学力形成の課題をもB君は抱えていたように思われるのだ。おそらく「ちぐはぐ」のまま放置しておいてはいけない子だったように感じたのである。
詳しい生育暦も発達障害の状態も、さらには父親の自殺の痛手もよくわからないなかで、いわゆる「気になる子どもたち」にも通低する問題なのではないかと思いながら感じたのはそういうことだったのである。
②「稚内レポート」を聞いて
有本裕美（北大大学院教育学研究科修士課程）
今回の研究会では、加害者である少年たちの「未熟さ」が話題になった。犯行を計画してから実行するまでに思い留まるだけの時間は充分にあったはずなのに、結局彼らが犯行に至ってしまった背景には、少年たちの凶悪性というよりはむしろ、自分の行動の結果をじっくり考えたり、損得勘定をしたりすることすらできない幼さがあるように思う。実行役だった少年Bは自動車が好きで、依頼料の30万円を将来の自動車学校の受講費に使おうと考えていたと記事にあった。家庭の問題が深刻だったことの反動からか、無理にでも楽観的に考えようとする傾向があったのではないだろうか。彼らには嫌なことに正面から向き合い、今回、A先生が「負の感情」と表現されたような感情を溜めこむだけの耐性が低かったのではないかと考えられた。
このような少年たちの実態は、現代社会の反映でもある。競争性の高い現代社会は、成功に邁進する傾向を助長し、新たなチャンスを掴むための効率性やポジティブ思考を奨励する。このため人々には、過ちを反省するための時間も機会も奪われてしまっている。少年たちよりむしろ、社会自体が耐性を失っているとも言えるだろう。また、情報化が進んだことで価値観が多様化し、落ち込むべき事態を前向きに捉え直すことが可能になった。その結果、向かい合うべき「負の感情」自体が存在しないかのように、あるいは非常に漠然としたものであるようになってしまった。漠然とした不快感は、吐き出すことも消化することもできず慢性的に鬱積し、一気に暴発することがあるという。これは、子どもが一見些細なことをきっかけに突発的な攻撃行動をとる、「キレる」と呼ばれる現象のメカニズムである。
「未熟」な少年たちは周りが見えず、周囲の好意に気付かないことがある。彼らが基本的信頼感を持ち得ていなければ、その大人側からの好意を好意として受け取ることもできないかも知れない。あるいは、濃密といわれる地域の人間関係が、濃密だからこその排他性を有していることも考えられ、少年たちがそれを敏感に感じ取っていた可能性もある。いずれにせよ事件を起こした彼らはある意味で孤立しており、他人に頼ることが惨めに感じられ、「自分のことは自分がやらなくては」という意識が強すぎたのではないだろうか。しかしその意識は自立・独立のためには不可欠なもので、彼らが幼少期から成長している証でもある。今後の矯正教育の下、彼らがさらに成長し、より広く周囲を見渡せるようになるだろうことが、わずかな救いである。
③研究会感想 A（稚内の小学校教員）
真宗学と縁の深い環境で育った私にとって、まさかあの場で教行信証と再会するとは思ってもみませんでした。間宮さんがレポートで書かれていた「坂元が（悪についての）国民的教養の遅れを指摘し、それを広く教育の課題としていることが卓見なのであって…」という言葉に共感しながら、日常的に何となく感じつつ明かにできなかった部分から曇りがとれていくような感覚を味わわせていただきました。ありがとうございました。
教育2月号巻頭でその坂元忠芳さんが「思春期にいたるまでずっと、悪と善との内的葛藤をとおしての自己再帰的な学習がほとんど不可能に近い状態で奪われていた事実」を人格発達上の問題として挙げていらっしゃいます。その「不可能に近い状態」にあることを論議の俎上にのせていくことが早々の課題だと思っています。その時に必要になってくるのが親鸞にとっての「悪」、つまり行為の根源にある人間の心性に対する眼差しだと思います。
昨年12月、保護者との懇談（学年懇談）では、そのような視点からいじめなどについての話をしました。その懇談の直前までは、「自分の娘がいじめられている（またはいじめられるのではないか）」とナーバスになり、学校に対応を強く求めていた母親が、その懇談の後、「実は、わたしはいじめ続けた側だったのです。だからいじめる側の悪意がとてもよくわかるので心配でたまらない…」と泣きながら話してくれたり、我が子の中にある「悪意」について冷静に見てみようとする親が現れたりしました。
私のレポートにも書きましたが、今必要なのは人間の負の心性に対する眼差しでしょう。個の責任に帰着させられる評価システムも含め、教育再生会議の提言にあるような「排除」「恫喝」が社会的・教育システム的に行われている現状は「悪」に対する国民的教養の遅れであると指摘されてしかるべきです。が、（真宗門徒でなくとも）人間の負の心性に対する眼差しを共有していく可能性もまた、私たちの社会は土壌として持っているようにも感じています。
田尻悟郎氏（英語教員：島根・中学教諭→大学教授）「教師の力量」『視点・論点』（ＮＨＫ教育テレビ）
（ＮＨＫのテロップ「『ニューズウィーク日本版』に世界のカリスマ教師の一人として紹介される」）
代表的な英語教育研究者の教員研修論。徳長誠一さんがまとめてくれたものを紹介します。教育再
生会議のメンバーにもこの具体的な提言を読んでほしいものです。
大学の教育系学部の志望者が減少。力量を備えた若者を確保することは絶対条件。教員志望者の減少は憂慮すべき事項である。
では教師の力量とは何か。一般的に教師の仕事としては「授業、行事の企画・運営、生徒指導、校務」などがある。その中でもいちばんの仕事は、授業。「授業は出来るだけたくさん見ろ。出来るだけたくさん見てもらえ。」とよく言われるが、残念ながらこのことはあまり実行されていないのが現状である。その最大の理由が、先生方が授業に自信を持てないこと。それを改善するには、卒業時、または各学年終了時に、生徒にどのような力を付けておきたいかという目標を明確に持つことが必要。年間を通じて鳥瞰図的に授業の構想を作ることができなければ、教科書を１ページずつしか薦めることの出来ない授業になってしまい、教科書を終えること自体が目標になってしまう。
この事態を引き起こしている原因として、例えば中学校などでは、新年度の準備で忙しい４月にな
ってから新しい教科書が配布されるため、充分に教材研究をすることが出来ないことがあげられる。また、担当学年分しか教科書が渡されず、３年間というスパンの中でで授業計画を立てる視点が不足していることもあげられる。
最近は週末になると、授業に関する研究会や研修会が開催されているし、数多くの書籍も出版さ
れているが、それらを自分で求めなければ、多くの場合は自分たちが数十年前に受けた授業の模倣をすることになる。授業力アップのためには、先生方が研修会に参加しやすいような条件整備や、財政面でのバックアップが望まれる。
また教員の資質向上を目指して各自治体の教育委員会が主催する研修会や研究会もあるが、必
ずしも成果を上げているとは限らない。研修会の成功の可否を握るのはは、研修会の内容と講師、参加する教員の意欲とプロ意識である。
「良い授業」とは一方的な知識の注入ではなく、生徒が自ら学び、友だちと協力し、知ることの喜
び、関わることの喜びを感じられることの授業であり、そのようなことを実践・研修している教師を講師として招き、演習をしていけば、実り多い研修になる。そしてそれぞれの先生方はそこで学んだことを基に、自ら継続的に研鑽し、生徒からアンケートをとって、授業のアセスメントを行ったり、作品や活動、レポートなど、生徒のアウトプットを分析し、授業の質を高める努力をして頂きたい。
次に、授業と並んで教師の大きな仕事である、生徒指導についてである。生徒指導というと、問題が起こった後の事後指導というイメージが強い。本来は生徒をどのように育てたいかという、明確な目標を持ち、在学期間中だけではなく、卒業後何十年にもわたって、生徒がたくましく、心豊かに生きていくための指針を与えることが生徒指導である。
生徒一人一人を理解し、たくさん会話をし、生徒の学校生活や、学習をつぶさに観察し、それぞれに合ったアドバイスを与える、これがいわゆる「先手の生徒指導」であり、問題の事後指導ならぬ、事前指導である。そのためには多くの時間が必要だが、問題が起こってから割かなくてはならない膨大な時間と比べ、何もないときに生徒のために割く膨大な時間の方が、生産的である。
生徒に寄り添い、鍛え、共に汗を流すことによって、生徒は教師を信頼し、自らを高めようとする。そうして教師を信頼した生徒は、教師に対して心を開く。「先生は生徒のためにがんばっている」ということが伝われば、生徒は教師に近づいてくる。また生徒への話し方も重要なポイントであり、教師の声のトーン、言葉の選択、表情などは、生徒が心を開くかどうかの分かれ目となり、これもプロの教師として求められる力量である。
それに加え、最近の若い先生方や、教育系大学の学生は、生徒をどう叱って良いかわからないという悩みを持っている。折角築き上げた生徒との人間関係を叱ることによって崩してしまうのではないか、と危惧している。今後は効果的なほめ方と同等に、効果的なしかり方を研究し、指導する必要がある。生徒は叱られても、納得すればついてくるし、叱られないことを不満に思うことがある。また感情的に怒る先生は信用しない。
次に教師の力量として案外見逃されがちなのが、行事で生徒を育てる力である。行事は単に実施するものではなく、それぞれの行事で生徒をどのように成長させるかという計算が必要。行事の成功には、生徒が全体像を把握しており、更に自分のなすべき事項を知っており、教師の指示がなくても動ける状態にしておくことがポイントである。
そのためには、教師が口頭で説明する時間を減らし、文字や図、イラストなどから情報を得させたり、生徒自身に説明させたり、自分たちが計画したことを体験しながら修正させたりなど、主体的に動く経験をさせることが大切。そして最終的には、生徒が主体となって行事を運営できるように育てていかなくてはならない。その際、教師は生徒にチャレンジを促し、アドバイスを与え、時には失敗するとわかっていても挑戦させて、自ら気づけるようにし向けることも必要である。
しかしながら、残念なことにそのようなことについての研修はほとんどない。現実的には個々の先生の力量に任されており、そのノウハウが伝承されていない。
活気のある学校は、生徒会活動が活発であり、行事に積極的に関わる姿勢は、企画力・運営力・協調性など、社会に出てから必要とされる力を育む。行事を通じて生徒を育てるという観点は、学校教育がよりよくなるためにももっとスポットライトを浴びられるべきである。
科学は先人の業績の上に新たな発展が積み重ねられていく。一方、教育では、それぞれの先生が０から始めなくてはならないと言うことが多く、教員の力量は大部分が個人の努力に委ねられている。もちろん、それも大切だが、それだけでは教育の発展は望めない。教師の力量をアップさせて行くには、業績を蓄積して、次の世代の先生方に伝えていくシステムが必要である。また、学校経営、学年経営、学級経営、行事運営、生徒指導、年間指導計画、テスト作成方法など、とても重要でありながら、大学ではあまり教えられていない。このような分野の指導
を充実し、教員採用試験の際に、受験者にそれらのことに関して、理想と目標、展望などを述べさせることも、教師の力量アップにつながるのでないか。
文責 徳長 誠一(稚内高校)
釧路の教育第１回 釧民教（せんみんきょう）
釧路地区は、北海道の民間教育研究運動で最も活発な地域民教運動が行われているところであり、また、ここ数年、教育科学研究会関係者の大学教員が何人も教育大学に赴任しており、北海道の教育の希望を感じさせる地域です。そんな釧路の教育について、これから、釧路の方の執筆も交えながら、連載紹介していきたいと思います。
①８８回に達した釧民教集会
今年１月に釧路市内で行われた釧路民間教育研究団体連絡協議会（釧民教）の１月研究集会は、堀尾輝久さんを講師として招いての講演「地球時代を生きる子どもたち」、中学校教師の大森修二さんによる講座「大森さんのもの作り講座」、１１の分科会が行われました。参加者は小学校から大学まで全ての校種からあり、広い釧路地区（釧路市と周辺町村）から多数の参加者がありました。
②安定した事務局体制
釧民教は、１０数名の事務局員を擁し、堅実な運営を行っている全国的にも貴重な民教です。６年後には１００回を迎えるという集会の歴史は、道東の教育関係者の豊かな教育財産を感じさせます。
北海道民間教育研究団体連絡協議会（道民教）では、地域民教の中心である釧民教に、９０年代以来の夏の合同研究集会開催の期待が高まっています。
「教育再生」という名の教育破壊の危険性を読み解く本２冊
教育基本法が改定され、「教育再生」のための法改正が国会で審議されています。教育の危機、子どもたちの生存発達の危機に、教育基本法改定と「教育再生」は本当に向き合ったものなのでしょうか。子どもや専門家（教育学者、教師）の声を聞いた上での政策立案を行っているのでしょうか。疑問を感じざるを得ない、思いつきの「再生」政策が次々と出され、あっという間に実行しようと狙われています。
このような情勢の下、安倍流「教育改革」で学校はどうなるのか？改定教育基本法によって、教育はどう変えられようとしているのか？その動きの中に存在する危険な部分をどう分析し、対処し、国民に訴えていくべきなのか。この重要な課題に向き合う本が２冊、教科研関係者が編集・執筆する形で出されました。『安倍流「教育改革」で学校はどうなる』（大月書店）と『改定教育基本法 どう読み どう向き合うか』（かもがわブックレット）です。どちらも安価で入手しやすい本ですので、ぜひ購入し、情勢と課題と展望を読み解き、語り合い、行動する手だてとしてご活用ください。
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田中孝彦・世取山洋介編『安倍流「教育改革」で学校はどうなる』 大月書店、１，３６５円 |
「教育再生」をうたい、教育基本法「改正」を強行した安倍政権の真の狙いは、財界の強い要求に応え、教育に新自由主義を導入することにあった。全国学力テスト、教育バウチャー制、教員免許更新制などの政策がもたらす格差・競争・統制の教育にどう立ち向かうべきか。同様の政策を導入したイギリス・アメリカの実態の検証や、学校はどう変わるのかQ＆A、対抗への展望などで考える。
執筆者
勝野正章（東京大助教授）、金子隆弘（東京民研）、木附千晶（ジャーナリスト）、佐貫浩（法政大教授）、田中昌弥（北海道教育大助教授）、小泉広子（桜美林大講師）、中嶋哲彦（名古屋大教授、犬山市教育委員）、中嶋みさき（大東文化大講師）、中田康彦（一橋大助教授）、中村尚子（立正大講師）、成嶋隆（新潟大教授）、平塚眞樹（法政大教授）、山本由美（浦和大助教授）。
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浦野東洋一・佐藤広美・中嶋哲彦・中田康彦編著 『改定教育基本法 どう読み どう向き合うか』かもがわブックレット、６３０円 |
憲法と子どもの権利条約、教育判例やすぐれた教育実践の視点で、改定された教育基本法を読み直し、教育運動に新たな展望を与える。
改定条文に込められている政治的、政策的な意図を、国会や教育再生会議などの論議、現実にすすんでいる教育改革の実態とあわせ、批判的に考察する。
日本国憲法や子どもの権利条約の体系的解釈、これまでの教育判例や優れた教育実践を紹介することにより、改定条文の主権的国民解釈を試みる。
改定教育基本法のもとでも可能な教育実践、学校づくり、教育運動、条件整備の運動を励ますよう、原則的な観点を提起し、そのためのヒントや実践例を紹介する。
春、別れと出会いの季節
１２年間勤務した学校から今回異動となりました。１年生の担任をしていたのですが、クラスでは女子生徒たちが泣きながら別れを惜しんでくれました。男子でも抱きついてくる子などもいて、隣の市の学校への異動なのですが、寂しさを感じさせられました。
クラスでの別れを終え、職員室に戻ったところ、中学校時代から学校では全く話すことのなかった女子生徒がやってきて、別れの挨拶をしてくれました。１年生の後半、休みがちになり、担任とお母さんと話をしました。お母さんは一言話した後はずっと泣いていました。母親の子育ての責任という見方をされたこともあったのだと思います。その女子生徒とは昼休みに一緒に食事をし、話をする練習をしていきました。そうしているうちに教師が話しかけると話すようになり、さらに授業で当てたれると発言できるようになっていきました。最後のＨＲではクラスのみんなに一言挨拶もしたそうです。彼女は「先生、ありがとうございました」と言い、「これからやっていけそうかい？」という問いに「はい」としっかりとこたえてくれました。
いじめの相談が担任からあり、お母さんや本人と話し、サポートする中でいじめのなくなった女子生徒も挨拶にきてくれました。笑顔での別れ。本当に良かったと思いました。他にも何人かの生徒（個別に相談にのり、援助していた生徒）が挨拶にきてくれました。
何人もの生徒と話し終え、廊下に出たところ、学年で一番心配されている男子生徒が立っていました。「あの、先生にお別れの挨拶を言おうと思って・・・。」「そうか。それでここで待っていてくれたのかい。」突発的な行為で心配をかける生徒だった彼に、私はよく声をかけ、関わっていました。「いいかい。イライラする気持ちとかをため込まないで、良い友だちがいるんだから、話したり、相談したり、気分転換をしたりしていきなよ。」そんな話を彼にしました。「はい。先生も次の学校でも頑張ってください。」彼は真剣な顔で私に言ってくれました。
生徒たちとの別れの時は、あらためて発達援助職としてこれからも歩んでいこうと確認させてくれた時でもありました。